封建制度から近代的な文明開化に移行した歴史上きわめて重要な明治維新前後の史実を取材した作品は多い。
それらを総称して「明治維新物」と呼んでいる。広義には散切物や、明治8年9月、大阪の芝居で初演され大阪で流行した「早教訓開化節用(おしえぐさかいかせつよう)」、別訓(はやがくもんかいかごよみ) などの新聞種の脚色ものも含まれようが、維新物といえば、やはり明治維新に直接関係のある事件を背景にした史劇をいうのが妥当であろう。
その意味では、明治8年6月、新富座の彦三郎に書き下された黙阿弥の「明治年間東日記(めいじねんかんあずまにっき)」などを最初とすべきであろう。
これは上野の彰義隊の戦いとその末路とを扱ったもので、明治元年から8年までの8年間をエピソードを交えて1年1幕ずつの8幕に脚色されている。四民平等の布令を主従が結婚するという新時代の思想を写した作品である。
翌9年5月、黙阿弥作の時代物「牡丹平家譚(なとりぐさへいけものがたり)」、通称「平家物語」「重盛諌言」が中村座にて初演された。
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