「深見千三郎」浅草キッドー天才たけしを育てた天才!全浅草芸人が一目置く伝説の男<第10回>浅草六区芸能伝|月刊浅草ウェブ

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深見千三郎

東洋興業会長(浅草フランス座演芸場東洋館) 松倉久幸さんの浅草六区芸能伝<第10回>浅草キッド「深見千三郎(ふかみせんざぶろう)」

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深見千三郎篇【第1回】活弁士『麻生子八咫(あそう こやた)』が語る❗月刊浅草オーディオブック

今回の主人公は、深見千三郎(ふかみせんざぶろう)。…あれ?聞いたことのない名前だな…。そう思われる方が大半でしょう。

それもそのはず、全ての浅草芸人から一目置かれた稀代の天才コメディアンでありながら、中央に出てゆくことを嫌い、メディアへの露出も一切拒んだ幻の『伝説の浅草芸人』なのですから。みなさんにはむしろ、”ビートたけしを育てた師匠”と言ったほうが、馴染みやすいかもしれませんね。

頑固一徹、一途に芸の道を究め、浅草に骨を埋めた伝説のコメディアン・ビートたけしの師匠「深見千三郎」のダンディな生き様、一人でも多くの方に知って頂けたなら、心から嬉しく思います。

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◆天才を育てた天才!『幻の浅草芸人』と呼ばれたビートたけしの師匠

深見千三郎(ふかみせんざぶろう・本名:久保七十二)は大正12年、北海道浜頓別町の生まれ。

高等小学校卒業後の昭和14年、すでに浅草で売れっ子芸者兼歌手として活躍していた姉の染子(芸名:美ち奴)を頼って上京し、様々な芸事に勤しみます。その後一時帰郷したり、浅草で身に着けた芸を礎に劇団を立ち上げ、全国を回っていたことも。

戦時中には軍需工場での事故により、左手の四本の指の第二関節から先を失うという悲劇にも見舞われました。時代の波に翻弄され、随分苦労を重ねたようです。そんな深見千三郎が再び浅草に落ち着き、東洋興業に入ったのは、昭和33年のことでした。

彼の名は、ずいぶん前から私どもの耳にも届いていました。深見千三郎という名の、優れたコメディアンがいるらしい。どうやらこの男、相当の実力者のようだ…と。
そんな噂を聞きつけたうちの文芸部員が当たってみたところ、意外にもすんなりと話がまとまり、ロック座に所属する運びとなったのです。

昭和33年頃といえば、浅草六区興行街に最初の暗雲が見え始めた時代。
吉原消滅により客の流れが変わったもののロック座、フランス座ともにかろうじて盛況を維持してはいましたが、一方で花形コメディアンたちが一人、また一人とテレビ界へ巣立ってゆき、このままでは当の劇場のほうにはスターが不在…という事態に陥りかねない、そんな危機感が生まれつつあった時期です。
そういう時でしたから、即戦力となる深見千三郎の存在は、非常に有難いものでした。しかも、その実力ときたら、想像のはるか上!芝居はもちろんのこと、歌ってよし、踊ってよし、楽器も弾ければ、洒落たタップまで踏めるのです。そして何より素晴らしかったのが、強烈な毒舌と異様なまでにキレのよい突込みが冴え渡る、圧巻のコント。その面白さときたら、まさに感動ものでした!

深見千三郎の魅力は、芸だけに留まりません。小柄な身体を何倍も大きく感じさせるような風格と、役者らしい色気を備えていました。“芸人は舞台を下りても常に恰好良く”とのポリシーから、いかなる時にもお洒落を忘れません。…もっともその装いは、万人受けするものではなかったかも知れませんが(笑)。派手なスーツにリーゼントでビシッと決め、いかにも高級そうな白い革靴は、磨き上げられてピッカピカ。一見するとその筋のコワイお兄さん風…実は本人、大のヤクザ嫌いだったのにね(笑)。独特のオーラを放ちながら颯爽と六区を闊歩する姿は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。

>次ページ「深見千三郎とたけし、運命の出逢いの瞬間とは!?」

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東洋館〜浅草フランス座劇場〜

歴史あるフランス座(ふらんすざ)の名前でも有名な東洋館。正式名称は「浅草フランス座演芸場東洋館」です。
現在はいろもの(漫才、漫談など)を中心とした演芸場。建物を同じくする姉妹館・浅草演芸ホール(落語中心の寄席)とともに、歴史ある浅草お笑い文化の一角を担う存在と自負しています。「浅草フランス座」以来の伝統を受け継ぎつつ、新しい「お笑いの発信基地」でもある当劇場へのご来場を心よりお待ち申し上げております。
浅草観光の際には是非ご利用ください。


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