「再演に向けて」心と表現<第21回>熊澤南水|月刊浅草ウェブ

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6月24日、沖縄での武道館公演を翌日に控え、リハーサル終了後のアクシデントで、当初はぎっくり腰だと勝手に判断していた症状が、結果的には胸椎圧迫骨折だと判ったのは、40日も経過した8月初め、それからやっとコルセットを装着して、ようやく痛みから解放されると云う、思いがけない事態を迎えてしまった。
「安静が一番ですよ」医師のことばが、遠い所で反響していた。
それでも、いくつか入っていたお約束の公演だけはどれも無事務め、私用の方は訳を話して許して貰って、暑い夏を自宅で過ごしたのである。
再演に向けて、チラシの手配やDMの準備をその間に終え、8月21日(大安)、祈りを込めて一斉に投函、〝待ってました!〟とばかり、翌日から申し込みのFAXが鳴り始め、17日の方は僅か一週間程で8割が埋まって行ったのである。私はこの方達のお力で、これまで舞台公演を続けてこられたのだ。感謝を込めながら、座席を決めチケットを送る作業が続いて行った。
そして10日が過ぎた9月1日、私は大分へ向けて羽田を発ったのである。
明日、大分県立図書館で開催される、古典の日特別講座「文語文に親しむ」に参加の為、先輩お2人の講師と共に午後の便に乗ったのである。

NPO法人「文語の苑」が誕生したのは今から15年程前、代表を務めるA氏以下発起人の多くが、元大使を務めた経験を持つ御歴歴ばかり、ヒョンな事から私も仲間入りをして末席を汚している。海外での生活を多く体験した方が、改めて「日本語」特に「文語文」の素晴しさを再発見し、今の内にしっかり若者達に伝えておかなければと云う危惧を感じたのである。こうして産ぶ声をあげた「文語の苑」は、少々づつではあるが地道に着実にその歩みを進めている。
先ずは「候文で手紙を書こう」を目標に、講師の先生の許で寺子屋式授業が展開している。その中で私は朗読を担当させて貰っているだけで、白状すれば自らは候文はとても書けない。読む事は出来ても、いざ書くとなったらやはり難題である。
今回の講座もお2人の先生の間に挟まって、樋口一葉の「十三夜」を語ると云うもので、受講者の皆さんにとっては、一寸ひと息入れて頂くクッション剤的役割である。草の根を分けるように、地道な「文語の苑」の活動ではあるが、日本人のこころを象徴するような、美しい響きを持つ文語文の良さを、一人でも多くの人に解って貰いたいと願っている。

大分空港で、とんでもない物に遭遇した。米軍の新型輸送機オスプレイである。8月29日山口県岩国基地から配備先の普天間飛行場へ向う途中、コックピットの警告灯が点灯し、大分空港に緊急着陸していたのだ。空港南側の緑地にその機体はあった。エンジンの交換が必要と判断され、31日には、嘉手納基地から2基のエンジンと整備用資材が運び込まれ、私達が到着した1日には既に左エンジン交換の作業は終っていたようである。地元のテレビでは連日その姿が写し出され、一日も早く飛び去って欲しい旨の様子が見て取れる。同機は6月6日沖縄の伊江島でも緊急着陸をしており、驚いたのは岩国基地を飛び立つ前日にも、白煙を上げているのが目撃されていたと云う。
「沖縄県民の大変さを実感しました」
北朝鮮のミサイル発射問題で揺れている最中でもあり、県民の発したひと言は心に響いた。たった数日、駐機されただけでも、人々の思いはさまざまである。
JR大分駅前に、威風堂堂たる大友宗麟の銅像が立っていた。戦国時代の武将でキリシタン大名の一人でもある。良きに付け悪しきに付け取り沙汰された人ではあるが、大分県民が誇りに思っているからこそ、こうして駅前に銅像が有るのだろう。現地に足を踏み入れて初めて知る事柄でもある。

9月中旬頃には、17日の昼の部がかなり後方までの席が埋まり、これなら満席間違いないと云う確信はあったが、16日の夜の部は一寸心配な感じだった。3・11以降、夜の外出を控え人が増え、催し物は並べて人が入らないのだと云う。高齢化と相俟ってこの現象は増々加速していくのかも知れない。午後10時過ぎから、オペラを鑑賞すると云うヨーロッパの風習は、日本には永遠に訪れないのだろうか。
でも、まだ一ヶ月ある。その間に何んとか努力をして客席を埋め、一人でも多くの方に「お吟さま」の語りを聴いて頂こう。

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