浅草に出店して、10年目。店舗を持つことで知った新たな発見や喜びも沢山あったといいます。自身の作品を並べてじっくり見られる環境を得て、新しいアイディアが浮かびやすくなったこと。ゆっくりお茶を飲みながら、お客様と交流する場ができたこと。そしてやはり、手塩にかけた”わが子”たちがお客さまのもとに旅立ってゆく瞬間に立ち会えることが、何にもまさる悦びなのだそうです。
今後の一番の課題は、長野さんが素晴らしい職人さんと出逢い、長い時間をかけて絶大な信頼関係を築いていったように、後継者となる娘さんもまた、二人三脚で成長してゆけるような職人さんを探すこと。爬虫類皮の扱いには大変高度な技術が要求されるため、一つのバッグを全行程手掛けられるだけの腕を持った職人さんは希少で、残念なことに若手も育ちにくいのが現状です。娘さんの運命のビジネスパートナーが、一日も早く見つかりますように。そして、長野さんが貫いてきた今のスタイルをしっかり守りつつも新しい世代の風を吹き込み、益々素敵なANDREに進化してゆきますように!
良いモノは、良いのです。良いモノを手に入れるためには、それだけの対価を支払うのです。頑張って手に入れたものはそれだけ愛しいから、大切に大切に扱います。そうして育まれる作り手と買い手との心豊かな交流から、本物の満足感や幸福感が生まれるのではないでしょうか。
ANDREの心尽くしの仕事から、とても大事なことを教えて頂きました。
良質な仕事を介して、真の豊かさを提供できる街。いつの時代も変わらずそんな魅力溢れる街であって欲しいなと願いつつ、今日も大好きな浅草を“ぶらり散策”する、まい子なのであります...。
(「月刊浅草」編集人 高橋まい子)
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