「沢 竜二(さわ りゅうじ)」の波乱万丈俳優記<第10回>月刊浅草ウェブ

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<其ノ十~鼻の穴より大きな度量!常に笑顔の北島三郎~>

北島のオヤジと強い絆が生まれたのは、芝居によるところが大きい。初共演は梅田コマ劇場で好評を博した『残侠の詩』だったが、新宿コマでの再演にもぜひ参加して欲しいと、本人直々のラブコールを頂いた。次に私の部屋に来たのが北島夫人、次にマネージャーが。これには参った。
私は下北沢の本多劇場で自作・主演による大切な舞台『沢式ハムレット』を控えており、すでにポスターもチラシも出来上がっている。それは不可能だ。だが、あの手この手で攻めてくる(笑)。
「本多劇場は1時からか…これを2時に変え開幕すれば?」
私はとうとう根負けし、首を縦に振ってしまった…。
掛け持ち公演は初めての経験だったが、想像を絶する苦しさだった。新宿から下北沢へ向かう車の中で化粧と衣装を変え、現地へ着くや否や、カツラを被って舞台へ飛び出す!しかも『沢式ハムレット』では最初の出番は劇中劇、雪之丞変化のかっこいい闇太郎。相手役の二宮さよ子と二人での踊り、しかも美空ひばりの歌う「江戸の闇太郎」で!
連日そんなことを繰り返すうちに私の頭はパンク寸前、一体どちらの舞台に立っているのか解らなくなり、北島さん扮する玉井金五郎の名前まで忘れる始末。それでも役者魂でどうにかやり抜き、千秋楽には、最優秀演技賞を受賞!戴いた賞状には、新宿コマ劇場社長・坂治彦、そして北島三郎の名が連なっていた。
どうもこの一件で気に入られたらしい(笑)、翌年の芝居『天竜しぶき笠』では事実上の主役を任された。…が、さすがはオヤジ、芸人としての度量もまた超一流である。見せ場の感動的なシーンで私が滔々と長台詞を喋り、真正・女沢正(母)譲りの芝居(熱と力と奮闘努力の演技)で、兄役の北島の手を握りしめた瞬間、客席からは「いよっ、北島~!!」の大声援。美味しい所は、全て持っていかれた!…あの~、今まで喋ってたの、俺なんですけど…(笑)。
悔しいが、感心せずにはいられない。

>次ページ「芝居を終え、オヤジのショータイムの最中、あの揺れが襲う」

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