「川口待月堂」これぞディープな浅草。観音裏で風流人に愛され続ける祝儀袋・ぽち袋の百年店<第5回>まい子のぶらり散歩|月刊浅草ウェブ

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川口待月堂

№5「川口待月堂(かわぐちたいげつどう)~名入れ祝儀袋・ぽち袋専門店~」

浅草寺の裏手に広がる観音裏は、かつて花街として栄華を極めたエリア。今もその情緒を色濃く残すこの界隈には、観光客で賑わう雷門通りとはまたひと味違う、しっとりとした奥深い魅力があります。 

その観音裏にひっそりと佇む「川口待月堂」は、浅草でも非常に珍しい名入れ祝儀袋・ぽち袋の専門店。店主・川口瞳さんのお父様で書家の川口待月氏が現在の場所に店を構え、以来約一世紀、芸者さん、噺家さん、歌舞伎役者さん、踊りのお師匠さんなど多くの粋人たちに愛され続けてきました。
 
近年では一般の方、特に若い世代のお客様からの注文も増えているそう。伝統的な中にも斬新な感覚がきらりと光るデザイン、そして女性店主ならではのやわらかで可愛らしい遊び心が作品からほんわかと伝わり、支持を集めているのでしょう。

オーダー品が出来上がるまでの流れは、以下の通り。

まず、お客様との入念な打ち合わせを経て川口さんが総合的なデザインを決定します。名入れの場合は基本的にはお客様ご本人の手による文字、ご要望があれば川口さんが筆をとることも。その後、絵を描く、版木を彫る、刷る、貼るの各工程をそれぞれの職人さんが手掛けます。
発注からおおよそ2~3カ月、全行程手作業による、なんとも味わい深い自分だけのオリジナルぽち袋が完成!
製作した版木はお預かりするという形でずっと保管されるので、ほとんどのお客様が繰り返し注文なさるそうです。
   
終始にこやか、優しい語り口の川口さんですが、言葉の端々にはこだわりの仕事人らしい、きりりとした誇りが見え隠れ。特に印象に残ったのは、  「お客様からお金を頂く以上は、売る人間が納得したものでなきゃ、ね。」
とおっしゃった時の、真摯な眼差しでした。
使用している本柾紙は、時を経てなお魅力を増すもの。胡粉で描いたごく淡い色彩の透かし模様は、年月とともに変化してゆく紙上によりくっきりと浮かび上がり、新品とはまた違った美しさを醸してゆくので、永く大切に保管して下さる方も多いそう。ずっと残るものだからこそ、絶対にいい加減なものは出したくない。川口さんの江戸っ子らしい心意気が、小さな芸術品・ぽち袋の中にぎゅっと詰め込まれているのです。
とても気さくな川口さん、取材を終えたあとにも大好きな野球や美味しいお店の情報など、楽しいお話を聞かせて下さいました。まるで少女のようなはつらつとした表情が川口待月堂のシンボルマークのうさぎさんとオーバーラップして、わたしの心も一緒にぴょんぴょん飛び跳ねてしまいそうなほど、たくさんの元気を頂いたのでした。
もっとも、大人の街・観音裏でスキップなんて、いささか不似合いだったかな?

(「月刊浅草」編集人 高橋まい子)

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