「沢 竜二(さわ りゅうじ)」の波乱万丈俳優記<第6回>月刊浅草ウェブ

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<其ノ六~歌の師匠・船村徹と幻のデビュー曲~>

船村徹先生との出逢いは、旅役者として隆盛を極めていた時代に遡る。
その頃の私はロカビリー剣法で人気が爆発し、九州・関西地区でNo.1の集客力を誇っていた。しかし20代も半ばを過ぎ、このままでいいのかという疑問とともに、東京への志が芽生え出した。主たる理由は、3つ。1つ目は、「ウエストサイド物語」を観て丸3日寝込むほどの衝撃を受けたこと。2つ目は、後に『鉄砲節河内音頭』で有名になる親友・鉄砲光三郎と“どちらかが東京で成功したら、お互いを引き上げような”と酒を酌み交わしつつ約束したこと。そして3つ目が、とあるレコード会社に騙されたこと。買取100枚分の入金を済ませたのに50枚しか渡されないまま、相手はまさかのドロン!
しかし、皮肉にもこのトラブルが船村先生に繋がるきっかけとなったのだから、まったく、人生は解らない(笑)。
インチキ会社に煮え湯を飲まされたところで、むろん尻尾を巻く私ではなかった。この時製作したレコード「美少年 信長」を名刺代わりに大作曲家へ送り、東京進出への足掛かりを掴もうと試みたのだ。船村先生を選んだのは、当時大流行した春日八郎の『別れの一本杉』や小林旭の『ダイナマイトが百五十屯』のイントロが、大好きだったから。
数週間後に届いた先生からの返答は…“是非一度、お会いしましょう”‼

初対面のシーンは、今も鮮明に覚えている。
約束の日、新橋のコロムビア本社で、船村先生はピアノに向い座っていた。回転椅子でクルリと振り向いた瞬間の射るような眼差し。その圧倒的な迫力に、刹那“男として負けた!”と感じてしまった。それに対し、私を”ジャケット写真より大分劣るな”と感じた、船村先生の顔(笑)!それは私も、仕方なく認めますが…。
無謀にも私は訊ねた。
「先生、僕は美空ひばりに、村田英雄になれますか?」
「なれる!」…その一言で、心は決まった。 

そうなったら善は急げ!30人からの座員を路頭に迷わせ、客も泣かせ、断腸の思いで一座を解散し上京したものの、ここからが本当に長い試練の始まり。すぐにでもスターになれると思い込んでいたがそんな気配はみじんもなく、毎日やることといえば『赤城の三人男』という曲の1番の練習だけで、1年経ち、2年が過ぎても2番へ進むことすら出来ない。同期レッスン生の鏡五郎、冠二郎が相次いでデビューを果たす中、私はどんどん追い詰められていった。
そんな崖っぷちで自己プロデュースに目覚め、『母なればこそ』という楽曲を作ってクラウンレコードへ移り、この曲が世の注目を浴びたことをきっかけに、船村先生がついに鮮烈なデビュー曲『母しぐれ 涙の仁義』を書いて下さったいきさつは、前2回で詳しく述べた通りだ。

ところが、またもや事件発生‼誰もが大ヒットを確信した意欲作が、まさかの「発売禁止」となってしまったのだ。任侠映画を彷彿とさせる作風が、ヤクザ礼賛に当たるという。そして、次に用意された楽曲『襲名』も、同じ理由で「発禁」。これには流石の私も、奈落の底へ真っ逆さまだ。
ちなみに昭和37年、北島三郎の「ブンガチャ節」が卑猥だとして放送禁止になり世間を騒がせたが、放送のみ禁止はまだいいさ…私のは、発売すら禁止なのだから(笑)!
    
やはり、役者に戻るしかないのか…失意の私は、スター歌手になれるつもりで上京の際に売り払ってしまった芝居道具や旅衣装を惨めな思いで買戻し、それから暫くは食わんがため、ドサ廻りの日々に徹した。似たり寄ったりの境遇で苦しい下積み時代を送っていたポール牧泉ピン子曽根幸明(後に『座頭市子守唄』等の作曲家として有名になった)と知り合い、励まし合ったのもこの頃だ。

そんなある日のこと。名古屋のキャバレーで『俵星玄蕃』を歌い上げた私に、どうしても会いたいという客が現れた。 基本的に客席には下りない主義なので一度はお断りしたのだが、マネージャーが、とても立派な方なので是非会っておいたほうがいい、と。正直、あまり気乗りがしないまま下りて行ったのだが、そこにいたのは、なんと…!

※掲載写真の無断使用を固く禁じます。

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