「沢 竜二(さわ りゅうじ)」の波乱万丈俳優記<第11回>月刊浅草ウェブ

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<其ノ十一~大喧嘩から始まった勝新太郎との友情~>

勝っちゃんと初めて逢ったのは、渋谷仁丹ビルの「ドン・キホーテ」というバーだった。客は芸能人のみでマスコミ出入り禁止という、我々には何とも有難い店だ(笑)。

ある夜店へ行くと、勝新太郎が中央の席で飲んでいた。トイレに通じる廊下には、どうしてもその横を通らなくては行けない。ここはやはり、挨拶するべきであろう。
「初めまして、沢竜二と申します。」
「おぉー沢君!前に、共演したよな!」…いえ、初対面です(笑)。相当酔ってるな、こりゃ。
「え、してなかったっけ?じゃあ今度、『座頭市』をやるから、俺と一緒に出てよ。金は、幾ら払えばいい?」
私は基本的に、支払額を公表していない。というのは、歌手と役者の時では、金額が大きく変わってくるからだ。
「金はいいです、タダで出ます。2回目からは、頂きますから。よろしくお願いします。」
それで話はまとまったはずなのに、30分程一緒に飲んだ後で、明日また、事務所へ来いと言う。有無を言わさぬ一方的な物言いにカチンときた私、酔いもあってか、ついいつもの性格が出てしまった!”この人は、本物の怖い人”本能でそう感じていたにもかかわらず…。
「明日来い?ふざけんな!!」私はビール瓶をテーブルで割って立ち上がっていた。相手は座ったままで、
「ちょっと待て!」と身構えた。
その日の客は、野球の衣笠選手や相撲取りの龍虎もいて、
「沢ちゃん、止めろ!」の大声。
「よし、3分だけ待ってやる、言ってみろ!」
「明日は俺の誕生日だから、向島に芸者も沢山呼んでるから、それにお前が気に入ったから、またお前と飲みたいと思って…」
「なら最初から、そう言やぁいいじゃないか。言ったか!?」
「俺の口が足りなかった。謝る。」とテーブルに両手をついて頭を下げた。
「わかりました。私も大先輩に生意気なまねをしました。謝ります。」ひざまずいて、両手をついた。
「よーし、気に入った!!」言った途端に勘定を済ませ、二人で三軒までは覚えているが…そのまま、誕生会へ直行!
周り中を凍り付かせる喧嘩から始まったが、当の本人たちはあっという間に意気投合! ドン・キホーテではこの一件、後々までの語り草となったらしい(大笑)。

>次ページ「逐一この調子、全てが〈勝流〉なのだ!」

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