「初席の見どころ」寄席の楽しみ方<第43回>浅草六区芸能伝|月刊浅草ウェブ

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浅草演芸ホールの初席

東洋興業社長(浅草フランス座演芸場東洋館)「松倉久幸」さんの浅草六区芸能伝<第43回>

あっという間に、師走の声。

浅草演芸ホール席亭/東洋興業株式会社社長の松倉由幸さん(以下・席亭)に、初席の見どころをはじめとした寄席の楽しみ方について、活弁士/小誌副編集長の麻生子八咫(以下・子八咫)が伺ってまいりました。
年明けと同時に浅草演芸ホールへ繰り出し、新年の風情とともに初席の楽しさをご堪能頂けましたら、幸いです。

 

子八咫:まず最初に、寄席にとっての初席の意義・意味合いから教えてください。

席亭:初席は、1月1日〜20日までの特別興行です。
例年、1日〜10日までが落語協会、11日〜20日までが落語芸術協会の興行と決まっています。
気分も新たに、「今年一年またよろしくお願いします」という年始のご挨拶であり、今年も頑張るぞという区切りの意味合いがあります。
噺家(はなしか)さんたちにとって、初席の舞台に立てるということは、非常に名誉なことなのです。

子八咫:初席の芸人さんはどうやって決められるのですか?

席亭上野・浅草の協会のかたが集まって、顔付け(寄席の番組を決めること)をします。

子八咫:初席ならではの、いつもと違うところは?

席亭:お正月の華やかな飾りが施され、新年のお客様をお迎えいたします。
酒樽なども飾られ、それはそれは華やかです。
1月1日〜5日まではいつもと異なり、朝9時〜夜9時までの興行(途中入れ替え有り)となりますので、ご注意ください。

子八咫:浅草演芸ホールだけでなく、上階の東洋館でも初席はあるのでしょうか?

席亭:はい、ございます。ただ、「お正月は落語が聴きたい」というお客様が多いので、東洋館でも1日〜5日は、落語家さんがトリを務める寄席の興行が行われます。
浅草演芸ホール(1階)と東洋館(4階)を掛け持ちで落語家さんたちが行ったり来たりします。
したがって、漫才の興行(初席)は1月6日〜です。
これも、いつもとは違うところですね!
また、12月31 日の大晦日は、19時に閉場して翌日からのお正月興行に備えます。

子八咫:あらためて、寄席の魅力とは?

席亭:好きな時間から好きな時間まで、ぶらっと立ち寄って楽しめる、時間の制約がない点が寄席の大きな魅力です。
最初は贔屓の芸人さんを目指して寄席にやってきて、他のいろいろな芸人さんの芸も見て、そこで新たに好きになった芸人さんを目指してまたご来場いただく…という風にお楽しみいただければ、嬉しいですね!

子八咫:人通りも増えて、だいぶコロナから回復しているように思いますが、その辺はいかがですか?

席亭:おかげさまで、コロナ前以上にお客様は戻ってきていますが、団体さんはまだまだ回復していないのが現状です…

子八咫:ポジティブな意味合いで、昔と変わったところと、昔から変わらないところはどこですか?

席亭:変わったところは、街が明るくなったこと。
昔はいゆる繁華街で、盛り場でしたから、安心して歩けませんでしたし、私も小さい頃は近寄らせてもらえませんでした。けれど、今は新しい建物が建ち、商業施設もできて、道路も舗装されて綺麗になり、お子さんでも女性でも安心して歩ける街になりましたね。ですから、若い方や女性でも、気軽に入りやすい寄席になってきていると思います。

『昔から変わらないところは、人と人とのつながりが密なところ』これが浅草の一番の魅力です。

子八咫:スタッフの方々の呼び込みがとても楽しく、それぞれ工夫されているように感じますが、何かご指導されていることはありますか?

席亭:特にないですが、表に立つということは看板ですから、「人には親切にしなさいよ」と伝えています。あとは一人ひとりが工夫しながら楽しくやってくれています。

子八咫:お話が非常に上手なので、芸人さん志望の方もいるのでは?と思いました。

席亭:そういう人もいましたね。今は、いないかな(笑)。

子八咫:売店では、珍しいものや楽しいものがいろいろ販売されていますね。おすすめなどありますか?

席亭:オリジナル手拭い、笑点グッズなどはとても人気です。東洋館限定販売で話題の「東羊羹」は、演芸ホールの売店にはありませんが、初席で東洋館の方へ落語を聴きに行けば買えますので、こちらもぜひ!グッズはこれからまたいろいろと増やしていきたいと考えておりますので、ご期待ください。

子八咫:関連書籍もたくさんあるのですね。松倉久幸会長の楽しいご著書『浅草で、渥美清、由利徹、三波伸介、伊東四郎、東八郎、萩本欽一、ビートたけし…が歌った、踊った、喋った、泣いた、笑われた。』もおすすめですね!

席亭:ありがとうございます(笑)。

 笑う門には福来る。新年の幕開けは、どうぞ浅草演芸ホール/浅草東洋館の初席で!爆笑とともに、最高のスタートを切ってくださいね。

(取材・写真/麻生子八咫)

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浅草演芸ホール

【浅草演芸ホール】浅草唯一の落語定席 明治17年から続く浅草笑いの伝統!

浅草演芸ホールは、鈴本演芸場(上野)、新宿末廣亭、池袋演芸場とならぶ、東京の「落語定席」のひとつです。
「落語定席」とは、1年365日、休まずいつでも落語の公演を行っている劇場のことで「寄席(よせ)」とも呼びます。
昭和39(1964)年のオープン以来、10 日替わりで落語協会と落語芸術協会が交互に公演を行っています。
落語のほかにも、漫才、漫談、コント、マジック、紙切り、曲芸、ものまねなど、バラエティーに富んだ番組をご用意しています。
昼の部と夜の部は、原則として入替えがありませんので、お好きな時間においでになって、心ゆくまで「演芸」をお楽しみいただけます。
萩本欽一やビートたけしなどを輩出した、お笑いの殿堂「浅草演芸ホール」に、是非一度お越しください。


浅草演芸ホール〜公式ページ