「『月刊浅草』創刊600号」伝統あるタウン誌とタイアップで街おこしのビジョン<第33回>浅草六区芸能伝|月刊浅草ウェブ

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座談会の席では、浅草の歴史が網羅できる本格的な資料館の設置、かつてのひょうたん池のような人が憩えるエリア作り、映画の街・浅草の復活を目指した上映会の企画等に関する意見も飛び出したそうです。これらはいずれも我々六区興行街の望むところでもありますし、私としても芸能関係の資料や映画については、協力出来ることが多々あるでしょう。
特に映画の上映会に関しては、ちょうどタイミング良く前号でもご提案したところですから、その辺りをもう少し掘り下げて、具体的に考えてみようではありませんか。

何をするにせよ、まずネックになってくるのは施設(スペース)の問題です。出口の見えない慢性的な不況に加え、今回のコロナ騒動。ただでさえ難しいと思われてきた新しい劇場等の建設は、残念ながら、現状においては絶望的といって間違いないでしょう(笑)。ならば皆さんのおっしゃるように、いまあるものを有効活用する策に方向転換したほうが、よほど現実的です。確かに、浅草の街中に目を向けてみれば、空きビルやテナント、公園など、使える場所がけっこうありそうですね。
上映会について、隅田公園に仮設小屋の設置や、屋形船とのコラボといった画期的なアイディアも出たそうですが、ならばいっそ、隅田川エリアと六区興行街エリア、両方で行ってはどうですか?両サイドから攻めれば(笑)、行き交う人々が街全体を広く見渡し、商店や飲食店等に寄ってお金を落としてゆく結果にも繋がるでしょう。欲を言えば、観音裏エリアにも客足が流れるような何かを企画出来たらなお良いですね。あちらも猿若三座で栄えた大衆芸能史における大切な場所ですから、多くの人に知っていただけたら、きっと浅草全体のためにもなるはずです。

さて、私からもひとつ、面白いご提案があります(笑)。
第30回の記事で、フランス座時代に広告担当だった星合林三さんの仕事場として建てられた屋上の小屋についてお話したことを、覚えていますか?…ふと思いついたのは、きれいに現存しているあの小屋も含め、うちの屋上を、イベントなど何らかの形で利用できないかという事です。灯台下暗しで普段は忘れていますが(笑)、よく考えてみると、ここは浅草寺やスカイツリー、夏には隅田川の花火も一望できる、絶景スポットなんですよね。
そして、なんといってもこの屋上は、ここから巣立っていった錚々たる芸人たちが芝居や漫才の練習をした、彼らにとって”もうひとつの舞台”とでもいうべき場所です。
私は、たけしが必死でタップダンスの練習をしたり、相方と漫才の練習をしたり、さらに遡れば師匠の深見千三郎が剣劇の稽古をしたり…そういう姿を目の当たりにしていますから、そういったことも浅草芸能史の一ページとして残し、皆さんに知っていただく機会が作れたら、とても喜ばしいのです。東洋館の映写設備は、すぐにも稼働できる体制が整っていますから、どんどん活用していただければと思います。例えば、定期的に上映会&イベントを開催し、東洋館で映画を観た後そのままエレベーターで屋上に上がって見学してもらう、とか。思えばあのエレベーター自体も、けっこう貴重な歴史の産物ですからね(笑)。
アイディア次第で色々、面白い事が考えられそうですよ。

つい先日のニュースで知ったばかりですが、たけしがフランス座での修業時代を描いた自伝的小説「浅草キッド」が、Netflix配信の映画として製作されるそうです。監督・脚本を務める劇団ひとりは、たけしに憧れて芸人を目指し、夢を実現したとか。浅草大衆芸能文化をきっかけに、こうして才気溢れる若者が脈々と世に出て活躍してくれるとは、何とも嬉しいことではありませんか!
今、たけしらに憧れた世代が中堅となり、わくわくするような仕事にチャレンジして、世間を楽しませるようになってきている。そしてやがては、同じように彼らの後進が頭角を現わしてくるのでしょう。それは、もっともっと過去から延々と受け継がれてきた、一足飛びには築けないループなのです。何としても、守らなければいけない。私たちの仕事の大きな意義は、そこにあると思っています。

浅草の活性化についても、全く同じことが言えるのではないでしょうか。日本一の繁華街と言われた浅草が衰退して以来、先人たちはあの手この手で元気な浅草を取り戻そうと、試み続けてきました。長い年月の中で、実を結んだもの、そうでないもの、賛否も色々ありますが、幾度となくピンチに直面しても決定的に沈没することなく、その都度何とか持ちこたえて来れたのは、浅草愛に溢れた人々のトライアルがあったからこそです。その精神を決して忘れず、受け継いで実現してゆくことこそ、我々の義務でしょう。どんな形でもいい、浅草の大切な文化の灯をともし続けてゆこうではありませんか。
時の運というのも、確かにあります。芸人たちの世界でも、才能に恵まれながら時代に翻弄され、人知れず消えていった者が、どれだけいたことか。けれど、その芸を伝授された後輩たちが次の時代に開花した例だって、沢山あるのです。街おこしにしても同じことで、あの時はダメだったけど、今なら!…という案が、眠ってはいませんか?そういうことを世代を超えて話し合っておくのは、すごく大切な事ですよ。伝えなかったばかりに可能性が立ち消えになってしまうのは、とても悲しいことですからね。

600号を迎えた「月刊浅草」にも、今年は時代に即した新しい動きがあるようですから、楽しみですね。今後とも協力体制で、ともに浅草を盛り上げてゆきましょう!

(口述筆記:高橋まい子)

※掲載写真の無断使用を固く禁じます。

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