東洋興業会長(浅草フランス座演芸場東洋館)松倉久幸さんの浅草六区芸能伝<第24回>「麻生八咫・子八咫(あそうやた・こやた)」
2019年11月14日、浅草オペラのロングラン公演「歌と活弁士(かつべんし)で誘う ああ夢の街浅草!」が大好評のうちに千秋楽を迎えました。わが東洋館では全16公演中11公演を担い、おかげさまで連日大盛況。実力派の歌手・演奏家らによる本格オペラを庶民派テイストにアレンジした楽しさ満載のステージは、まさに浅草の真骨頂!終始笑い声の絶えない、素晴らしいものとなりました。
大正浪漫の雰囲気をさらに盛り上げてくれたのは、日替わりで司会進行役を務めた活弁士の麻生八咫・子八咫親子(あそうやた・こやた)。
現実とオペラの世界とを行き来しながら繰り広げられる見事な話芸は、本公演のもう一つの目玉でもありました。
ところで皆さん、活弁が日本独自の職業であり、実は浅草発祥といっても過言ではないほどこの地と縁が深いことを、ご存知でしょうか?
浅草オペラについては、以前特集いたしましたので、今回は活弁にスポットを当て、お話を進めてゆきたいと思います。
思うところあり、最近この連載では数号に渡り古い時代の芸能を中心に取り上げているのですが、例にもれず活弁もまた、若い方にとっては”未知との遭遇”でしょうから(笑)、まずは基本的なことから、順を追って解り易く説明してまいりましょう。
活弁(活弁士・弁士)とは、活動写真弁士(かつどうしゃしんべんし)の略称。サイレント(無声)映画を上映するにあたり、スクリーンの傍らで物語の筋を説明したり、巧みに声色を使い分けながらセリフをつけたりする芸人さんです。