収入面においては、踊り子と芸人の間には、月とスッポンほどの差がありました。言ってみれは、ストリップ劇場という職場は、女性上位社会の先駆けですね(笑)。解りやすく言えば、駆け出し芸人のギャラは小遣い程度、人気役者でもかろうじて生きてゆけるくらい、座長クラスでさえも贅沢をする余裕など全くありません。一方、踊り子はと言えば、着衣ダンサーでも花形役者の収入を上回っていたくらいですから、フルヌードさんともなれば、稼ぎは相当なものです。
よく、一部の芸人は下積み時代、踊り子のヒモだった…なんてことを言われますが、踊り子たちはみな苦労人で情が深く、ピュアな心の持ち主ですから、食うや食わずの芸人に恋心を抱けば、かいがいしく生活の面倒を見てあげずにはいられなくなってしまったんでしょうね。
世間から見れば非難の対象になることは否めませんが、これもまた、厳しい世界で生き抜く男女の、一つの青春の形だったのだと思います。
ダンサーや女優として成功した者、幸せな結婚をした者、堅実にお金を貯めて事業を始めた者、そして男や酒に身をやつし、消えていった者…浅草の花の行く末は百人十色ですが、芸能の世界はその振り幅が極端だというだけで、幸も不幸も結局、自らの人生に対する姿勢一つにかかっているという現実は、誰しも同じではないでしょうか。
彼女らも、ひとたび舞台を降りれば、一般のお嬢さんと何ら変わりのない、直向きでとても可愛いらしい、普通の女の子だったことを、解っていただきたいのです。
次回は、今回紹介しきれなかった彼女たちにまつわるこぼれ話や、フランス座の舞台裏についての興味深いエピソードなどをご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに…!
(口述筆記:高橋まい子)
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