「和泉屋」暖簾とともに守りたいのは、日本文化と伝統技術。<第21回>まい子のぶらり散歩。

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第21回「和泉屋(いずみや)~和装履物・小物専門店~」

今回ご紹介する「和泉屋」は、和装履物・小物店。現社長・梶川雄司さん(2016年9月現在)で8代目、江戸時代より200年以上も続く老舗です。“何だか敷居が高そう…”いえいえ、そんな心配はご無用。どうぞ気軽にお立ち寄り下さい。履物や小物をきっかけに、一人でも多くの方に和装への興味、そして日本文化への興味を深めて頂けたら、こんなに嬉しいことはありません。
 
店内に一歩足を踏み入れてまず驚かされるのは、品揃えの豊富さ。下駄、草履、雪駄などの履物類に加え、和傘、洋傘、袋物、バッグ…と実に多種多様。ここに来れば何でも揃いそう、という風格は流石。より多くの種類の品を、納得して頂ける品質・価格で提供し、きめ細かな調整や修理を重ねながらお客様と末永いお付き合いをさせて頂きたい、それが和泉屋のポリシーです。

次ページ「買い物をより楽しんで頂ける店であり続けることが、老舗としての役目」
 
履物は、お好みの台(本体)と鼻緒を選んで頂き、お客様の足に合わせて熟練の職人が丁寧に鼻緒をすげます。
台も鼻緒も、目移りしてしまうほどバラエティ豊か。例えば下駄の台なら焼き加工、畳表付、鎌倉彫…草履なら普段使いの軽素材から高級な蛇皮張り、貝細工を施した芸術的なものまで。鼻緒もちりめん、ビロード、刺繍、印伝、蛇皮…等々、組み合わせは無限大!世界でたった一つ、自分だけのオリジナルが完成します。きっと末永く大切にしたい、という愛着が芽生えることでしょう。それは決してお金には換算できない、素敵な心の贅沢です。
「履く頻度により個人差はありますが、季節毎、一年毎とまめにメンテナンスしてゆけば、最適な履き心地を永く保てます。和装履物って、本来そうやって楽しむもの。”チョットここが当たるんだけど、見てくれない?”って感じで(笑)気軽にご相談頂ければ、いつでも、何度でも対応いたします。」 大切に履いた1足が、いつかお役目を終えた時、“2足目もまた和泉屋で”とリピーターになって頂けるような、誠実な仕事が信条です。
子供用の履物に力を入れているのも、そんな気持の表れ。子供は、日本文化の継承者。親から子、子から孫へと、2代、3代のお付き合いを通じ、お客様と二人三脚で優れた和装履物を後世へ伝えてゆければ、何よりです。

実は和泉屋には、創業当時から続く“もう一つの本業”があります。それは、煙草販売。店の一角には色とりどりのパッケージに身を包んだ煙草が、見慣れたものから珍品まで、賑やかに並んでいます。
「吸うほうも売るほうも肩身の狭いご時世ですが(笑)、これもまた、大切な本業。江戸時代には女工さんがいて、オリジナルの刻み煙草も作っていたようです。煙草も一つの文化として、各銘柄から手巻、葉巻、パイプまで、一通りのものはここで相談できますよ、というところを目指しています。」

家業を継いだ当初は暖簾を守りたい一心でしたが、年を重ねるにつれ、日本の文化と技を守ってゆきたいという思いを強くしている梶川さん。全てに共通して言えることですが、購入して下さるお客様が消えてしまったら、職人もまた消えてしまいます。そして、一度途絶えてしまった技を復活させるのは、不可能に近いほど難しい。だからこそ、スペースの許す限り多くの品を取り揃え、買い物をより楽しんで頂ける店であり続けることが、老舗としての役目だと考えているそうです。
 
居ながらにして何でも買えるネットショップは、確かに便利。でも買い物の楽しみって、沢山のものを見て、触って、お店の人と笑顔や言葉を交しながら、本当に欲しいものを見つけ出すところにあるはず。それが、文化の継承に繋がるなら、なお素敵ですよね。

(「月刊浅草」編集人 高橋まい子)

追記:「和泉屋」は、残念なことに長い歴史に幕を閉じましたが、このように、暖簾とともに文化も守っていた素晴らしい老舗があったことを、知っていただければ幸いです。

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