「沢 竜二(さわ りゅうじ)」の波乱万丈俳優記<第17回>月刊浅草ウェブ

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<第17回~市川右太衛門・北大路欣也親子の激励が私を変えた!~>

 今回は、私の役者人生に大きな影響を与えた歌舞伎界の方達との交流を中心に、お話しよう。

 平成20年、《沢竜二が歌舞伎を演じたら、どうなるか?》という面白い試みをした。古典の名作『応挙の幽霊』を沢流にアレンジした、坂口良子と日本舞踊家の西川扇与一との三人芝居だ。坂口も良い芝居をするが、扇与一がまた、凄い。歌舞伎舞踊の「操り三番叟」を独演する場面など、思わず息を飲む程の素晴らしさだ。作品はたちまち大評判となって全国を廻り、どの会場も連日満員御礼!

 この試みが大成功を納めたので、次の浅草公会堂でも沢流歌舞伎・第2弾をやろうということになった。演目は、忠臣蔵を題材にした「大石の東下り」。ところがこの舞台を観た歌舞伎関係者から、クレームがついた。
 〈女沢正〉の名を持つ母が演っていたので、私は歌舞伎の知識には明るい。けれど今回の舞台はあくまで「沢流」歌舞伎なので、敢えて王道を外しているのだ。そこにイチャモンを付けるとは、ナンセンスもいいところ‼とばかりに、その当時は威勢よく突っぱねたのだが(笑)…。    

 昔、紀伊国屋ホールで、私は市川右太衛門さんからいきなり登場の指名を受け、大層なお褒めの言葉を頂き、
「チャンバラが上手く、特に二刀流が上手いんだってな、沢君は。」と、握手までお客様の前でして頂いた。
右太衛門さんといえば歌舞伎出身で、いわずと知れた時代劇の御大である。私はこれほど名誉なことはないと、心底嬉しく思った。勿論、その日は手を洗いませんでした(笑)。

 更に後年、右太衛門さんの息子である北大路欣也さんとも、忘れられない出来事があったのである。
 それはあるパーティーの席でのことだった。
「沢さん、ずっと前から一度、じっくりお話したかったんです。これから30分だけ、僕に時間をくれませんか?」と、欣也さん。もちろん、私も望むところだ。
「沢さんは、もしかしたらそろそろ、引退たいなんて思ってませんか?」
その時、私は70歳…はっきり言って、図星である(笑)。
「絶対に、退めないで下さいよ!」
そう云って欣也さんは、紙に5本の横線を引きながら、話し始めた。
「この図が時代劇役者の世界とすると、1本目の線は子役、2本目が売り出し中の若者、3本目が中堅の売れっ子、4本目が主役も張れるベテラン、5本目が大御所。そこそこ才能があればキャラだけで3本目までは行けるけど、4本目へ行くのは難しい。それは、若い頃の精進が決定的に足りないからです。だから、主役を張れる者が非常に少ないんですよ。沢さんのような本物の時代劇を継承して下を指導する役者が居なくなったら、この世界は駄目になります。だから、絶対に退めちゃいけません!」

 この名優二代からの激励を機に、私の考えは完全に変わり、それまでの何倍もの努力を重ねるようになった。

 それから随分経って、平成29年、第30回座長大会で「新門辰五郎」を演じた際、市川猿之助さんが「素晴らしいお芝居でした。大衆演劇の方が、こんな立派なものやっているとは、存じませんでした。今度、ご一緒して頂けますか?」と声を掛けて下さった。この時、今まで一生懸命やってきて本当に良かったと、心から誇らしく思えた。

 歌舞伎も大衆演劇も、初舞台は4歳前後と、ほぼ同じ。けれどその扱いには、天と地ほどの差がある。そういった口惜しさも常に心の片隅にあったのだろう、ある時まで、私は歌舞伎界には反発心むき出しで(笑)やってきたが、それは完全に間違いだったと、今なら解る。両者の差は、圧倒的な努力量の差なのだ。歌舞伎の方々の、子供の頃からの日々の精進・努力の積み重ねには、今は只々頭が下がり、敬意を抱くばかりである。母が好きだった《実をつけて首を垂れる稲穂かな》の真意が、歳を重ねるごとに、身に染みるようになってきた今日この頃だ。

 収まらぬコロナ禍や災害に、私の周囲でも訃報が相次ぎ、胸の痛む日々。一体なぜ…と、彼らの人生を想う時、自分の人生についても、振り返らずにはいられない。〝もしも今度生まれ変ったら、どう生きる…?〟今、私だけでなく多くの人が、自身に問いかけているのではないだろうか?
 今度生まれ変わったら、私は歌舞伎を一から学んでみたい。役者としてのみならず、人として誇れるだけの努力を、子供の頃から積み上げてみたいと思うのだ。そして後輩達には、役者以前に、立派な一社会人たれと、強く願う。若者は生まれ変わらずとも、これからいくらでも努力する時間があるのだから!

 12月の座長大会(※)では、「歌芝居」を披露しようと思っている。しかし私が歌手である事は意外に浸透していないので(笑)、次回は歌にまつわる話をしよう。八代亜紀いわく、「あら、沢さんて凄く歌が上手いのネ。CD、出せばいいのに!」…あのねぇ、俺は70枚近くも出してるんだよ!!でも売れないしな…まぁ、いっか(笑)! 

沢竜二
沢竜二

※沢竜二プロデュース公演・第34回「全国若手座長大会」
12月15日新宿文化センター1F大ホール【昼の部】13:00【夜の部】17:30(詳細はバナー参照)
お問合せ・チケット販売:沢竜二事務所 03-3367-5051まで。
(チケットぴあ、ローソンチケット、新宿文化センター窓口でも取り扱い中)

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