犬も歩けば像が立つ<第1回>懐かしの浅草芸能歩き|月刊浅草ウェブ

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「最近の犬は、毛糸の固まりみたいなのが歩いてますね。あの毛を一本引っ張ったら、犬がなくなっちまうんじゃないか」古今亭志ん生という人のセンス、間(ま)の取り方、声の張り具合(「毛糸の固まり……でやや低い調子になる)も含めて、笑いに引き込む力は今さらながらすごい。「むく犬の口に蚤(のみ)が入ったような」というたとえも、慌てたり、パニック状態になった人物描写でよく使われるので、志ん生師匠は犬好きかなと調べてみると1890(明治23)年庚寅のお生まれだった。

ともあれ『元犬』も師匠の得意な演目で、浅草の蔵前稲荷、現在の蔵前神社境内から始まる。「人間になりたい」という白犬の祈願が叶ったものの着物がなく、素裸でいたところを町内の人入れ稼業(職業斡旋業)・上総屋の主人に助けられる。やがて「変わった人を雇いたい」という隠居の家に奉公するが、出生地をたずねると「蔵前の金物屋の裏」、名前は「ただ、シロです」「只四郎か?」と、どうも要領を得ない。「おい、鉄瓶が(沸騰して)チンチンいってるぞ」といえば前足(両腕)を上げるので、気味が悪くなった隠居がお手伝いさんのおもとを呼び「もとはいぬか?」、只四郎が「へえ、今朝ほど人間になりました」。演者自身の愛嬌も印象に残る一席。

相撲と縁が深いことから「蔵前神社」の社号標(石柱)、玉垣に「日本相撲協会」をはじめ横綱の名も並ぶ。

かつて広大な敷地だった蔵前神社だが、現在は住宅地のなかで風格のあるたたずまいを見せる。その鳥居をくぐって右側、社殿を見上げるように立っているのが「元犬像」だ。浅草在住で落語愛好家、庶民文化研究家で愛犬家の〝三遊亭あほまろ〟こと工藤裕司氏が奉納、神社の公式ホームページによれば2010(平成22)年6月5日、例大祭初日に建立除幕式が行われた。像のモデルは寄進者宅にいる白い北海道犬のナナ(当時3歳)で、人なつこい性格とのこと。

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